元文化部と元運動部の深夜ウォーキング
ダメだ、もうその光景を見るだけで喉がギュッと締まるような感覚がしてしまう。

恋なんて案外簡単に落ちるもので、好きになる瞬間なんて一瞬なのかもしれない。好きになった瞬間がこの深夜のいつだったかなんて分からない。

それでも心はいつの間にか惹かれていて、それから歩いている内に好きの結晶が降り積もっていくようだった。

「で、何味だと思う?」

「えー、ぶどう?」

「ハズレ」

「じゃあ、みかん」

「それも違う」

「変化球でサイダー!」

「ふはっ、サイダーって変化球なんだ。でも、ハズレ」

笠木くんがバッグから飴を二粒取り出す。赤色のパッケージが目に入って、私ははいっ!と手を挙げた。
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