きみと、まるはだかの恋
「圏外じゃん……」

 久しぶりに目にした「圏外」という二文字に胸がざわつく。『ベストツーリズム』さんと来たときはスマホに触れることがなかったので気づかなかった。山間の村だから、圏外になっていたとしてもおかしくはない。

「あの、ここってWi-Fiはありませんか?」

 店員さんに尋ねる。レジの奥でゴソゴソと仕事をしていた彼女は「わいふぁい?」と異国の言葉でも聞いたかのようにきょとんとしている。

「なぁに、それ。都会で流行ってるデザートかなにか?」

 ギャクではない。本気で知らないようだ。そんなことがあるのか。
 私は、平静を装いつつ、「なんでもないです」とWi-Fiを諦める。
 まじか……。
 どうすればいいのだろうか。
 途方に暮れていたところで、「お店を出てネットが繋がる場所を探そう」と決意する。それしか方法がない。だって星見里に暮らしているひとたちだって、ネットは必要でしょ? まったく繋がらないはずがない。
 なんとか自分にそう言い聞かせてコーヒーをもう一口、口に含んだときだ。
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