きみと、まるはだかの恋
 昴が用意してくれていた朝ごはんはとてもおいしかった。
 手の込んだ料理というわけではないけれど、ひとが作ってくれた朝ごはんがこんなにおいしいなんて長らく忘れていた。卵焼きはふわふわでほんのり甘い。甘党の私にとっては絶妙な味付けだった。

 朝食を食べ終えると、昴の部屋にあるつなぎを着てメイクをする。分かってはいたけれど、つなぎを着ると暑い。九月下旬なのでそこそこ涼しくなってきたものの、この姿で一日作業をするとなると汗だくになりそうだ。
 だけどまあ、なんだか職業体験みたいでちょっとだけ心躍っている自分がいた。

「お、おおー」

 準備を整えて昴の元へ戻ると、彼はつなぎ姿の私を見て何やら感心しているような素ぶりを見せた。

「なに、変なところある?」

「いや、全然。むしろその……そういう格好しても様になってるな。さすが都会の人気者」

「それ……褒め言葉?」

「もちろん褒めてるって!」
 
 ちょっと照れくさそうに顔を背けたところを見ると、どうやら本心で言ってくれたらしい。
 “さすが都会の人気者”というところは、あまり納得がいかないけれど、笑われるかと思っていたので、そうじゃなくて良かった。
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