きみと、まるはだかの恋
「で、何を手伝えばいいの?」

「今日はこれから稲刈りしようと思って」

「稲刈り!? そんな大事なこと、私がやってもいいの?」

 思わず大きな声を出してしまい、昴がきょとんと私を見つめる。それから、「ぷっ」と吹き出して、笑った。

「そんな大事なことって、全部大事だよー。べつに稲刈りに限った話じゃないって」

「そ、そうかもしれないけど……。いや、収穫なんてさせてもらっていいのかなって」

「むしろさ、俺のほうがちょっと見せたいっていうか。こんだけ頑張って作ったんだぜーって自慢したいんだって」

 へへ、と少年のような笑みを浮かべる昴が、素直な気持ちを口にしていてなんだかこそばゆい。そっか。昴は私に格好つけたいって思ってるんだ。
 私たちがこんなやりとりをしている間にも、彼を囲っている稲穂がさわさわと風に揺れる。まるで私たちが早く収穫をしてくれるのを待っているみたい。人間の子どもを見ているような気持ちになって、胸にほっと灯火がともる。

「分かったよ。それじゃあ、お手伝いさせていただきます」

 昴がニッと唇の端を持ち上げて、「こっちにきて」と手招きをした。

「はい、これ」

「鎌?」

 どこからともなく現れた鎌をひょいと、手渡す。
< 75 / 186 >

この作品をシェア

pagetop