幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
静かな夜明け、まだ彼の腕に抱かれていると、扉が開く音がした。

「……セシリア。」

ぎょっとして顔を上げると、そこに立っていたのは父──公爵閣下だった。

「夜ごと忍ぶ仲とは……皇子のすることではありません。」

厳しい声が部屋に響く。私は慌てて寝台から身を起こし、顔を真っ赤にした。

「申し訳ありません。」

ユリウスはすぐに立ち上がり、真剣な眼差しで父に向き合った。

「でも、どうか分かってください。俺にはセシリアしかいないのです。」

その声には迷いがなく、私は胸が熱くなった。

父はしばし無言で彼を見据えていたが、やがて深いため息を吐いた。

「……全く。頑ななお方だ。」

そして苦笑に近い微笑を浮かべる。

「ならば、せめて今度からは堂々と玄関からおいでください。」

「はい。」

ユリウスが深く頭を下げると、父は静かに部屋を去っていった。

残された私は、まだ熱の残る胸を押さえながら悟った。

──父もまた、ユリウスの想いを受け入れ始めているのだと。
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