幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
だけど、私よりも先に侍女が心配を口にした。

「セシリア様……やはり殿下にお伝えするべきです。」

「……言えないの。」

私はうつむき、指先をぎゅっと握りしめた。

「もし言えないのでしたら、私からお伝えを。」

「ううん、大丈夫よ。まだ……」

笑って見せたけれど、胸は不安でいっぱいだった。

──もしかしたら、この子供は“なかったこと”にされてしまうかもしれない。

そんな恐ろしい想像が頭を離れない。

どうすればいいの……。

その時だった。

「セシリア。」

低い声に振り向くと、そこにはユリウスが立っていた。

真剣な眼差しが、私を射抜く。

「そろそろ月のものが来てもいいころじゃないか?」

全身が凍りつく。

「……っ」

言葉が喉に詰まり、視線を逸らした瞬間、彼の眉がわずかに動いた。

──隠せない。

私の変化に、ユリウスはもう気づいてしまったのだ。
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