幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
国王はしばし沈黙し、冷静な眼差しで息子を見つめた。

「……ユリウス。おまえは本気で言っているのか。」

「はい。命を賭けても構いません。」

迷いなく答えるユリウス。その声は揺るぎなかった。

国王の視線が、今度は私に向けられる。

「セシリア嬢。これはおまえの望みでもあるのか。」

「わ、私は……」

声が震え、言葉が出ない。

私の答えひとつで、この国の未来さえ変わってしまうのだ。

「愛は尊い。しかし、婚姻は個人の想いだけで決めるものではない。」

国王の声は静かだが、厳しさを含んでいた。

ユリウスは一歩も退かず、私の肩を抱きしめる。

「父上。俺にとって、セシリア以上の相手はいません。」

重苦しい空気が執務室を満たしていく。

──ここから先は、ただの恋では済まされないのだ。
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