幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「父上……彼女のお腹の中に、俺の子がいるかもしれないんです。」

ユリウスの言葉に、私は息を呑んだ。

「えっ……⁉」

国王は目を見開き、信じられないというように私と息子を交互に見た。

「それは……確かなことなのか。」

「月のモノが遅れているのです。」

ユリウスの告白に、国王の顔色が変わる。

「……結婚の許しも得ていないのに、夜を共にしたのか!」

低い怒声が執務室に響いた。

「俺は……彼女を愛しているから抱いたんです!」

ユリウスは一歩も退かず、私を庇うように抱き寄せた。

「黙れ!」

国王の体が震え、その手が振り上げられる。

乾いた音が響き、ユリウスの頬が赤く腫れた。

「父上……!」

私は思わず声を上げたが、ユリウスは痛みに顔を歪めながらも真っ直ぐに父を見据えていた。

「俺は後悔していません。彼女を愛し、守り抜く覚悟です。」

国王の瞳には、怒りと苦悩が入り混じっていた。

──愛と責任、その両方が試される時が来たのだ。
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