幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「おまえは……嫁入り前の令嬢に傷をつけたんだぞ!」

国王の怒号が響き、ユリウスは床に叩き伏せられた。

「アルヴェール公爵に、なんと申し開きをするつもりだ!」

その言葉に私は息を呑み、胸が締めつけられる。

しかし、ユリウスはゆっくりと立ち上がり、傷だらけの姿でなお真っ直ぐに父を見据えた。

「アルヴェール公爵閣下は……すでに俺のことを認めてくださっています。」

「なっ……」

国王の表情が揺らぎ、深い溜め息が漏れる。

「ううっ……」

怒りと無念を滲ませながらも、国王は椅子に腰を落とした。

長い沈黙の末、重い声が落ちる。

「……仕方がない。結婚を認めよう。」

「父上!」

ユリウスの声が震える。私もまた信じられず、ただその場に立ち尽くした。

国王の瞳にはまだ怒りの炎が残っていた。

──それでも、親として、王として、もはや拒むことはできなかったのだ。
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