幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「その代わり、セシリア嬢には王宮で暮らしてもらう。」

国王は頭を抱え、深く溜め息をついた。

「身ごもったことは、明らかになるまで内密にするんだ。」

そして鋭い眼差しを私に向ける。

「よくもやってくれたな。」

「えっ……」

胸がざわめき、声が詰まる。

「子を成せば、結婚を許してもらえると思ったか。」

冷たい言葉に、全身が凍りついた。

酷い……そんなつもりは、決してなかったのに。

「父上!」

ユリウスが一歩前に出て、私を抱き寄せる。

「セシリアを侮辱するのはやめてください!」

怒りを宿した瞳で、まっすぐ国王を見据えるユリウス。

「彼女はただ……俺を愛してくれたんです。責めるなら俺を責めてください。」

「……ユリウス」

震える声で彼の名を呼ぶと、腕の力がさらに強まった。

国王はしばし黙したまま私達を見つめ、やがて低く唸るように言葉を吐いた。

「……ならば、すべての責任はおまえが負え。王宮での生活、覚悟しておくことだ。」

──こうして私は、望まぬ形で王宮へ迎え入れられることになった。
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