幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
すると父は、国王の前に深々と頭を垂れた。

「二人の仲を許したのは私です。……いつかはこのような事態が訪れるだろうと、覚悟しておりました。」

その言葉に、国王の表情が揺らいだ。

そして、あろうことか王は自らも頭を下げたのだ。

「息子が馬鹿な真似をして……すまない。」

「頭をお上げください、国王。」

慌てて父が止める。

「いいや。」

国王の声は低く、しかし震えていた。

「息子がしでかしたことは、父である私の失態だ。」

静まり返る執務室。

威厳ある王が、ひとりの父親として悔恨を示す姿に、私達は息を呑んだ。

その光景を、ユリウスはじっと見つめていた。

父の背中がこれほど小さく見えたことはない。

──自分の愛が、どれほど大きな責任を伴うものなのか。

ユリウスの胸に、新たな決意が芽生えていくのを私は感じていた。
< 112 / 150 >

この作品をシェア

pagetop