幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
両親に見送られ、私は王宮へと足を踏み入れた。

重厚な扉が開かれ、長い回廊を進む。赤い絨毯に、金で縁取られた壁。

──どこを見ても、豪奢で荘厳で、まるで別世界だった。

案内されたのは、ひとつの一室。

天井には煌めくシャンデリア、窓辺には繊細な刺繍を施したカーテン。

大きな天蓋付きの寝台が中央に据えられ、机や椅子までもが見事な工芸品だった。

「こちらが本日からお使いになるお部屋でございます。」

侍女が深く頭を下げる。

「……ありがとうございます。」

そう答えながらも、胸はざわめいていた。

あまりに豪華すぎて、息が詰まりそうだったのだ。

「ここが……私の居場所なのだろうか。」

両親の元を離れ、皇子の妃候補として王宮に迎え入れられた。

けれど足元はまだ覚束なく、心の奥には不安しかなかった。

ユリウスの隣に立つためには、この華やかな世界に馴染まなければならない。

──私は果たして、本当にやっていけるのだろうか。
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