幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
その夜、私は王宮の食堂に招かれた。

王族の夕食と聞いて緊張していたが、広い食卓に並んでいたのは、ユリウスと私の二人だけ。

「……ほかの方々は?」

思わず尋ねると、ユリウスは肩を竦めて微笑んだ。

「今夜は俺が望んで、二人きりにしたんだ。セシリアが気疲れするだろうと思ってね。」

胸がじんと温かくなる。

「でも……そんなわがままをしてよかったの?」

「わがままじゃない。これは俺の特権だよ。」

彼が軽く笑うと、侍女たちが温かな料理を並べていく。

焼きたてのパン、香草を効かせたスープ、見慣れぬ宮廷料理。

私は少し戸惑いながらも、一口食べて「美味しい」と思わず微笑んだ。

「気に入った?」

「はい。とても……」

するとユリウスが安心したように頷き、ワインを注いでくれる。

「セシリアが幸せそうに食べているのを見られるのが、俺の幸せなんだ。」

頬が熱くなり、視線を逸らす。

──豪華な料理よりも、彼の言葉が心を満たしていた。
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