幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
王宮での生活にも少しずつ慣れ始めた頃、私は侍女たちの何気ない会話を耳にしてしまった。

「……本当に殿下の妃になるのかしら。」

「政略を潰してまで迎えるなんて。」

「子を成したから仕方なくでは?」

背後で交わされる囁き声に、心臓が冷たくなる。

私は気づかぬふりをして鏡台に向かい、髪を整えるふりをした。

「でも、あの方はまだ若くて未熟ですわ。王宮の務めなんて務まるかしら。」

「そうね。いずれ殿下もお気づきになるでしょう。」

くすくすと笑う声が耳に刺さり、視線が霞む。

──やっぱり、私はこの場所にふさわしくないの?

「セシリア様、失礼いたしました。」

声を掛けてきた侍女の笑顔は、どこか作り物のようだった。

「……ありがとう。」

なんとか笑みを返したけれど、胸の奥は痛みに締めつけられていた。

その夜、ユリウスの顔を見た時、思わず胸が熱くなった。

この不安を口にしたら、彼はどう思うだろう──。
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