幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「それは、セシリアも同じなんだね。」

ユリウス殿下の問いかけに、私は涙に濡れたまま、思わずうんと頷いてしまった。

次の瞬間、殿下はあろうことか大広間の真ん中で私を抱きしめる。

「殿下……!」

驚愕する貴族たちのざわめきが、波のように押し寄せた。

「君の想い、確かに受け取った。」

低く熱を帯びた声が耳元を震わせる。

その腕の力強さに抗うこともできず、私はただ胸の奥の震えを感じていた。

殿下はゆっくりと振り返り、玉座に座す国王をまっすぐに見据えた。

「父王、私はこの婚約を受け入れることはできません。」

「なんと!」

その場にいた誰もが息を呑み、国王自身も玉座から身を乗り出す。

ユリウス殿下の視線は揺らがなかった。

「セシリア。今、俺の気持ちは君に向かっている。」

その言葉が放たれた瞬間、大広間はさらに騒然となった。

隣国の使節団が顔を紅潮させ、我が国の重臣たちが青ざめる中──

私の心だけが、熱い鼓動でいっぱいになっていた。
< 12 / 150 >

この作品をシェア

pagetop