幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
その日の茶会が終わった後、私はユリウスに連れられて庭園へと出た。

夕暮れの空に淡い光が差し込み、薔薇の花々が静かに揺れている。

「さっきは……ごめんなさい。」

令嬢の言葉を思い出し、胸が痛む。

「謝るのは俺じゃなくて、あの令嬢の方だ。」

ユリウスはそう言うと、立ち止まり、私の両手を取った。

「セシリア。俺は何度でも言う。君だけを妃に迎える。」

真剣な眼差しに、鼓動が速まる。

「でも……周囲の人は納得していないわ。」

不安を口にすると、ユリウスは小さく笑った。

「周囲など関係ない。大切なのは俺と君の心だ。」

そっと抱き寄せられ、温かな腕に包まれる。

「どんな噂が流れようと、俺がすべて退ける。だから信じて欲しい。」

「ユリウス……」

その胸の中で頷くと、唇に柔らかな口づけが落とされた。

──王宮という冷たい場所でも、彼の愛があれば大丈夫。

私は改めて、この人と生きる覚悟を固めた。
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