幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
そして私は、屋敷から布を取り寄せてベッドカバー用に仕入れた。

「何に使うつもりだ?」

背後からユリウスが首をかしげる。

「寝室のベッドカバーにするのよ。」

「そんなものは侍女が用意してくれる。」

私は首を横に振った。

「いいえ。これは嫁入り道具よ。薔薇の刺繍を施して、自分の手で仕上げたいの。」

そう告げると、ユリウスは目を見開き、しばらく黙って私を見つめていた。

「……本当にやるのか?」

「ええ。」

布を広げ、端から針に糸を通して刺繍を始める。

真っ白な布地に白い薔薇の花びらが、少しずつ浮かび上がっていく。

「一か月で間に合うのか?」

「間に合わせるわ。」

迷いのない声で答えると、ユリウスの口元に微笑が浮かんだ。

「……すごいな。俺の妃になる人は。」

そう呟く彼の眼差しが、私を誇らしげに照らしていた。

──刺繍を一針ごとに進めるたび、結婚の日が近づいていることを実感する。

その実感は、不安よりも幸福感を与えてくれるのだった。
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