幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
深夜。

寝室のランプの下で、私はまだ針を動かしていた。

どうしても間に合わせたい──その一心で、時を忘れて布と向き合っていた。

「セシリア……」

不意に低い声がして振り返ると、扉の前にユリウスが立っていた。

腕を組み、険しい顔で私を見ている。

「もうこんな時間だぞ。何をしているんだ。」

「ごめんなさい……でも、仕上げたいの。」

私の言葉に、彼は歩み寄ると針を取り上げ、机に置いた。

「身体を壊したらどうする。俺は元気な君と結婚したいんだ。」

叱る口調なのに、声は震えていた。

その優しさに胸が熱くなる。

「……ユリウス。」

「本当に心配させるんだから。」

そう言って私を抱き上げ、寝台に運んでくれた。

「続きは明日でいい。君の健康の方が大事だ。」

布団にくるまれると、額にそっと口づけが落とされる。

「セシリアは俺の宝物なんだ。だから大事にさせてくれ。」

叱られたはずなのに、心は甘い幸福感に包まれていた。
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