幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
数日後。

私は再び机に向かい、薔薇の刺繍に没頭していた。

一針ごとに形になるのが嬉しくて、つい時を忘れてしまう。

「セシリア。」

背後から声がして振り返ると、ユリウスが立っていた。

腕を組み、じっとこちらを見つめている。

「また刺繍か。……君は真面目すぎるんだ。」

苦笑しながら近づくと、私の手から針をそっと取り上げた。

「ユリウス、返して。」

「だめだ。今日はもう十分だろう。」

頬を膨らませる私の手を取ると、彼はそのまま引き寄せる。

「少し外に出よう。庭園の花が綺麗に咲いている。」

「でも……」とためらう私に、ユリウスは微笑んだ。

「刺繍も大事だが、花嫁が疲れて倒れたら元も子もない。俺と一緒に風に当たる時間も、必要なんだ。」

強引さと優しさが混じる言葉に胸が熱くなる。

「……はい。」

手を握られ、庭園へと連れ出される。

陽射しと風が頬を撫で、緊張で硬くなっていた心がほぐれていく。

ユリウスの隣にいるだけで、花々さえ祝福してくれているように感じた。
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