幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
薔薇園から戻っても、私は針を手放せなかった。

ベッドカバーに咲かせる薔薇は、まだ完成まで遠い。

「ここで花弁をもう少し重ねて……」

思わず独り言が漏れるほど、夢中になっていた。

「セシリア。」

背後からユリウスの声がしたが、上の空で答える。

「……うん」

「セシリア?」

返事はしても視線は布の上。

すると突然、視界が狭くなった。

「えっ──」

気づけば、ユリウスが私の膝に頭を乗せていた。

「ユリウス!? ちょっと、邪魔しないで!」

「邪魔するさ。」

彼は子供のように笑い、私の手を掴んで針を止めさせた。

「君に飢えているんだ。刺繍ばかりで、俺を見てくれない。」

胸がどきんと鳴る。

「……そんなこと言われても、式までに仕上げないと。」

「仕上げより大事なのは、君の温もりだ。」

真剣な眼差しに抗えず、私はそっと彼の髪を撫でてしまう。

「ユリウス……もう、本当に仕方ない人。」

彼は満足げに目を細め、私の膝の上で小さく囁いた。
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