幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「お妃様、髪を結いましょうね。」

朝早くから集まった侍女たちが、私の周りを取り囲む。

鏡越しに映る彼女たちの顔はどこか楽しげで、まるで自分のことのように嬉しそうだった。

「派手じゃなくていいのよ。あまり目立つと恥ずかしいから。」

おそるおそる伝えると、侍女の一人が笑顔で首を振った。

「いいんです。今日くらいは、思い切り綺麗にして差し上げますよ。」

櫛を通され、髪が丁寧に整えられていく。

薔薇を模した花飾りが一つ、また一つと刺され、私の髪は少しずつ華やぎを増していった。

「まあ……」

鏡に映った姿を見て、思わず声が漏れる。

そこには見慣れた自分ではなく、まさに“花嫁”にふさわしい姿があった。

そして最後に、白く長いベールがそっとかけられる。

その瞬間、光を受けた髪飾りと相まって、一層の華やかさが広がった。

──いよいよ、結婚式が始まる。

胸が高鳴り、鼓動の音さえ侍女たちに聞こえてしまいそうだった。
< 137 / 150 >

この作品をシェア

pagetop