幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
鏡の前に立った瞬間、胸の奥から緊張がこみ上げてきた。

手が震えそうで、息も浅くなる。

「セシリア、緊張しているのか。」

背後からユリウスの声がして、そっと手を握られる。

「大丈夫だ。俺がそばにいる。」

その力強さに、少しずつ心が落ち着いていく。

私は小さく頷いた。

「ほら、鏡を見てごらん。」

肩を抱かれ、促されるまま視線を上げると──そこには、薔薇の花飾りと純白のベールをまとった自分の姿があった。

「ここに、世界一美しい花嫁がいるよ。」

ユリウスの低い声が耳元に落ち、頬が一気に熱くなる。

「そして俺は、世界一幸せな花婿だ。」

言葉と共にぎゅっと抱きしめられる。

その瞳に映る自分が、ただの令嬢ではなく“彼の花嫁”なのだと、初めて実感できた。

──緊張よりも、胸いっぱいに広がるのは幸せ。

この人と歩む未来を信じて、私はそっと微笑んだ。
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