幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「これは、どういうことなのですか!」

椅子を勢いよく押しのけ、イザベラ姫が立ち上がった。

白磁のような顔が紅潮し、震える指先がユリウス殿下を指し示す。

「殿下は、わたくしとの婚約を国家の名において受け入れたはずです!それを今になって、あろうことか一介の公爵令嬢を妃に選ぶなど……国際的な侮辱に他なりません!」

その声は怒りに震えながらも、必死に気高さを保とうとしていた。

大広間の貴族たちが一斉にざわめき、空気はさらに張り詰めていく。

「姫君のお言葉、ごもっとも!」と叫ぶ隣国の使者も立ち上がり、剣に手をかける兵の姿まであった。

一触即発の気配に、誰もが息を呑む。

だがユリウス殿下は動じなかった。

「イザベラ姫、あなたは国のために婚姻を受け入れてくださった。だが、愛なき結婚は誰も幸せにしない。」

毅然と告げる声が、場の緊張を支配する。

姫は唇を噛みしめ、悔しさに涙を浮かべる。

その姿は、プライドを傷つけられた王女そのものであり、同時に政略の犠牲者でもあった。

私はただ震えながら、彼女の叫びを聞いていた。

その矛先が次に、自分へと向けられるのを悟りながら──。
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