幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛

「父王、どうかセシリアとの結婚をお許しください！」

ユリウス殿下の突然の言葉に、私は思わず飛び上がりそうになった。

「えっ……！」

思わず息を呑み、胸が激しく高鳴る。

殿下は私の動揺をよそに、真剣な眼差しを国王に向けていた。

その姿は幼馴染みでもなく、ただの第二皇子でもない。

愛する人を守るためにすべてを敵に回す、ひとりの男の顔だった。

「すまん、セシリア。こうでも言わなければ、この婚約は破棄できない。」

低く囁かれた言葉に、涙が溢れそうになる。

本気なのだ。

ユリウス殿下は本気でこの政略の婚約を捨て、私を選ぼうとしている。

だが国王は、深い溜息をつき、呆れたように額に手を当てた。

「……この話は一旦、保留とする。」

重苦しい空気が大広間を覆う。

隣国の使節団は怒りを押し殺し、貴族たちは顔を見合わせてざわめいた。

そんな中で私だけが──ユリウス殿下の手の温もりを感じ、心の奥で震えていた。