幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
ユリウスは第2皇子としての正装に身を包んでいた。

深い色合いの礼服に金糸の刺繍が施され、その姿は威厳に満ちている。

そんな衣装を纏うのは、大切な時だけ──その意味を悟った瞬間、胸が強く締め付けられた。

(やっぱり……今日、プロポーズされるのかしら)

期待と不安が入り混じり、視線を落としてしまう。

これほどまでに凛々しいユリウスを目の当たりにすると、嬉しいはずなのに体は緊張で固くなるばかりだった。

「セシリア。今日はなんだか固いね。」

からかうような声音に顔を上げると、彼の瞳が真っ直ぐに私を見ていた。

「あっ……うっ……」

言葉が喉につかえて出てこない。頬が熱くなり、視線を逸らす。

その様子にユリウスは小さく笑った。

「ふふ……そんなに緊張しなくていい。俺の前では、いつものセシリアでいてほしい。」

柔らかな笑みは、張り詰めていた空気を少しだけ解きほぐす。

けれど同時に、これから訪れる瞬間を確かに予感させた。
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