幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「……その、父がなんと仰るか。」

思わず口に出た言葉に、胸が締めつけられる。

結婚を決めたのは、まだ私とユリウスの間だけ。家の承諾も、国の承認も得ていない。

「そうか。」

ユリウスは一瞬だけ真剣な眼差しを向け、やがて決意を込めて頷いた。

「早速、アルヴェール公爵殿にお伝えしよう。」

「ユリウス……」

思わず彼の袖を掴む。父がどんな反応を示すか、恐ろしくてならなかった。

けれど、彼は私の手を取り、力強く歩き出す。

「大丈夫だ。俺の意志を伝えるだけだから。」

その声は、揺るぎない信念を宿していた。

薔薇の園を後にし、私たちは並んで庭園を歩いた。

夕暮れの光が差し込み、二人の影が寄り添うように伸びていく。

そして王宮を出ると、ユリウスは迷わず馬車に私を乗せた。

「行こう、アルヴェール家へ。」

車輪の音に揺られながら、私は彼の横顔を盗み見る。

──どんな困難が待とうとも、この人は必ず私を守ってくれる。

そう思うと、不安よりも希望のほうが胸を満たしていった。
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