幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
屋敷に辿り着くと、玄関に現れた父は目を見張った。

「……正装でお越し頂くとは、どのような事なのでしょうか。」

普段は私とユリウスの幼馴染みとして穏やかに迎える父が、今日はどこか他所他所しい。

その視線が、ただの訪問ではないことを敏感に察しているのだと分かった。

応接間に通された時も、いつもなら当たり前のように交わされる抱擁がなかった。

父が不思議そうに眉を寄せる中、ユリウスは真剣な面持ちで一歩進み出る。

「アルヴェール公爵閣下。」

声の調子からして、幼馴染みに向けるものではない。

「本日は──私の意思をお伝えに参りました。」

その場の空気が張り詰め、私の胸も高鳴る。

父の瞳が細められ、彼の心中に走った予感が表情に現れる。

「……なるほど。」

短く呟いたその声音は重く、これから訪れる話の重大さを示していた。

私は緊張で膝が震えるのを必死に堪えた。

──ユリウスが、ついに父に全てを告げるのだ。
< 56 / 150 >

この作品をシェア

pagetop