幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「よくぞ……ここまで仰ってくれた。」

父は目頭を押さえ、滲んだ涙を隠そうともしなかった。

「私は……あなたを誇りに思います、ユリウス殿下。」

その言葉に、胸が熱くなる。

父もまた、幼い頃からユリウスを我が子のように見守ってきたのだ。

だからこそ、その成長と決意に心を動かされたのだろう。

けれど、次に告げられた言葉は真剣そのものだった。

「ですが……現段階では、私の一存でどうこう申し上げられません。」

父の瞳が鋭く細められる。

「この結婚については──国王陛下にお返事をお任せいたします。」

その声音には、重責を担う大臣としての冷静さと、娘を思う父としての苦悩が入り混じっていた。

沈黙が落ちる。胸が締めつけられ、私は思わずユリウスの手を強く握った。

しかし父は、ふっと表情を和らげ、わずかに微笑んで見せた。

「それでも……私は二人を信じている。」

その笑みが、重苦しい空気を少しだけ和らげてくれた。
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