幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
帰り際、ユリウスはふいに私を抱き寄せた。

「本当は……このまま一緒にいたい。」

低く囁かれ、胸が熱くなる。

「私もです。」

素直にそう答えると、彼の腕の力がさらに強くなった。

その長い抱擁を目にした父は、ため息をひとつ漏らす。

「殿下。本日は天気が怪しいようです。いっそ、このまま屋敷にお泊まりになっては?」

ユリウスは思わず目を見開いた。

すぐに父の真意に気づいたのだろう。

「ユリウス……」

私は彼の袖をそっと引いた。

心臓が早鐘のように鳴りながらも、父の提案が嬉しくてたまらなかった。

ユリウスは私を見つめ、微笑を浮かべる。

「……お言葉に甘えて。」

その一言に、父の表情も柔らいだ。

ほどなくして使いの者が王宮へ走り、殿下が今夜はアルヴェール邸に留まる旨を伝えに行った。

薔薇の園で交わした誓いが、その夜、さらに深い結びつきへと繋がろうとしていた。
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