幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
食卓にはワインの香りと、笑い声が溶けていた。

「殿下は、幼い頃から負けず嫌いでしたな。」

父が懐かしそうに語ると、ユリウスは照れたように微笑んだ。

「セシリアが庭園で転んだ時も、真っ先に駆け寄って泣きながら怒っていたのを覚えています。」

「お父様！」

頬を赤らめて抗議すると、ユリウスが肩を揺らして笑った。

「いや、本当にあの時は必死だった。セシリアを守れるのは俺しかいないと、子供ながらに思っていたんだ。」

父はその言葉に目を細め、グラスを軽く掲げた。

「……やはり間違いなかった。殿下は娘を託すに足る男でした。」

「ありがとうございます、公爵閣下。必ずセシリアを幸せにします。」

ユリウスの真剣な声に、胸が熱くなる。

厳しい父と誠実なユリウス、そして私。

三人で過ごすこの時間は、もうすでに家族としての温かさに満ちていた。

グラスを傾けながら、私は心の底から「幸せ」という言葉を噛みしめていた。
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