幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
豪華な食事と温かな団らんを終えると、夜の屋敷は静けさに包まれていた。

私は自室に戻り、胸の鼓動がなかなか収まらないのを感じていた。

──まさか、父があそこまで認めてくれるなんて。

幸福と安堵が入り混じり、窓から見える夜空を眺めていると、そっと扉を叩く音が響いた。

「セシリア……俺だ。」

ユリウスの声。心臓が一気に跳ね上がる。

「どうぞ。」

震える声で答えると、扉が開き、彼が静かに部屋へ入ってきた。

灯されたランプの光に照らされた正装姿のままの彼は、どこか神聖な雰囲気をまとっていた。

「眠れそうにない。……君に会いたかった。」

そう言って近づくと、私の手を取り、そっと唇を重ねる。

昼間の薔薇園での誓いが、再び胸の奥に蘇る。

「セシリア。今夜は……君と未来を語りたい。二人きりで。」

真剣な声に、私は頷くことしかできなかった。
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