幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
部屋に入った瞬間、ユリウスはためらうことなく私を抱きしめた。

「君を放さない。」

低く熱を帯びた声が耳元で響く。

その言葉だけで胸が熱くなり、心臓が強く打ち始める。

「ユリウス……」

名を呼んだ瞬間、抱き締める腕の力がさらに強まった。

まるで私を決して離さないと証明するように。

「昼間、薔薇の園で誓ったことは、ここでも同じだ。俺の妃は君だけ。俺の未来は、君と共にある。」

真剣な眼差しで告げられる言葉に、頬が熱く染まり、涙が滲む。

「……私も、もう殿下以外を考えることはできません。」

その答えにユリウスの瞳が柔らかく揺れ、次の瞬間、唇が重なる。

深く、長く、互いの想いを確かめる口づけだった。

「セシリア……」

再び名を呼ぶ声は切実で、胸を焦がす。

私はその腕の中で、もう二度とこの温もりを手放さないと心に誓った。
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