幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
ユリウスは玉座を降り、列席した貴族たちの間をゆっくりと歩み始めた。

一人ひとりに微笑みを向け、礼を述べる姿は、まさしく「皇子」としての完璧な振る舞いだった。

「殿下、おめでとうございます。」

「末永いご多幸を。」

人々は競うように声をかけ、祝福を贈る。

彼に言葉をかけられることを誇りとし、その瞬間を待ちわびているのだ。

私の父もその一人だった。

公爵として列席し、長年仕えてきた誇りを胸に、晴れやかな顔でユリウスを迎える。

「殿下、ご婚約、誠におめでとうございます。」

父の声は少し震えていた。

それも当然だろう。

父にとって、ユリウスは単なる皇子ではなく、幼い頃から共に時を過ごした存在だったから。

大臣を務めていた頃、よく我が家を訪れては庭園で遊んでいた。

花に触れ、小川に石を投げ、少年らしい笑みを浮かべていた姿──。

「殿下は、我が家の庭園を殊のほかお気に召しておられましたな。」

父が懐かしむように語るのを聞きながら、私の胸は強く締め付けられていった。

そう、あの頃は私も一緒にそこにいたのだ。

ユリウスの無邪気な笑顔を、誰よりも近くで見ていたのは私だったのだから──。
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