幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
そして、ついに私の番が巡ってきた。

胸が高鳴りすぎて、足が震えるのを必死に抑える。

「ユリウス殿下、ご婚約おめでとうございます。」

声をかけると、彼は驚いたように目を瞬かせた。

「……セシリア。来てくれたのか。」

その表情は喜びに満ちているはずなのに、どこか寂しげで、胸が痛んだ。

私は思い切って懐から白い布を取り出す。

「不躾ながら……心ばかりの品をお納めください。」

そう言って差し出したのは、私がこの日のために刺繍した一枚のハンカチだった。

ユリウスは受け取ると、じっとそれを見つめる。

「……これを、俺に?」

「はい。薔薇はこの国の象徴です。殿下にこそ、ふさわしいと思いました。」

糸の一本一本に込めた想い。

本当は「あなたを愛しています」と伝えたくて縫った模様。

けれど口にはできない。

私は溢れそうになる涙を必死に抑えた。

せめて笑顔で、祝福だけは伝えたい。
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