幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
朝食の席に着くと、父はすでに待っていた。

静かな食堂に私とユリウスが並んで入ると、父の口元がわずかに緩む。

「……随分、遅くまでお励みになりましたね。」

紅茶を口に含んだ瞬間、思わずむせそうになった。

「お、お父様……っ」

顔が一気に熱くなり、視線を逸らす。

けれどユリウスは、微動だにせず堂々としたままだった。

「はい。眠る時間がありませんでした。」

あまりに率直な答えに、私は思わずユリウスの袖を引っ張った。

「ユリウス殿下!」

父はふっと鼻を鳴らし、パンを切り分けながら穏やかに言う。

「……まあ、それも若さというものだろう。」

恥ずかしさで消えてしまいたい気持ちと、父の柔らかな表情に救われる気持ちが入り混じる。

「セシリア。幸せそうで何よりだ。」

父の言葉に、私はうつむいたまま小さく頷いた。

隣でユリウスが誇らしげに微笑むのを見て、胸の奥がまた熱くなった。
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