幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
朝食を終え、玄関先に出るとユリウスは振り返り、真剣な眼差しで私を抱きしめてくれた。

「セシリア……父上には必ず伝える。俺には君しかいないと。」

胸の奥まで届くその言葉に、私は強く頷いた。

「はい。信じています。」

彼の腕の温もりが惜しくて離れがたかったが、ユリウスはゆっくりと手を放し、王宮へと帰って行った。

背筋を伸ばし歩み去るその姿は、ただの幼馴染みではなく──未来の伴侶を守ろうとする一人の皇子だった。

「結婚の承諾を得られるといいな。」

背後から父の声がして、はっと振り返る。

父の表情は相変わらず厳しいようでいて、どこか柔らかさを帯びていた。

「おまえの幸せを願っている。……セシリア、自分の気持ちを貫くのだぞ。」

「お父様……」

胸が熱くなり、自然と涙がにじんだ。

父とユリウス、二人から背中を押され、私は確かに未来へと歩み始めていた。
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