幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛

第6章 愛と政略の狭間

しかし事態は思わぬ方向に傾いていた。

「隣国が……ユリウスの態度に激怒している。」

父がもたらした報せに、私の胸は冷たく締めつけられる。

後に聞いたところによると、国王はユリウスを呼び寄せ、静かにこう告げたという。

「婚約とは国と国との和合だ。それを拒否するというのは、隣国の顔を踏みにじる行為に他ならぬ。」

ユリウスは真っ直ぐに答えた。

「私はセシリアを選びます。彼女以外に妃を望むことはできません。」

その揺るぎない言葉に、国王の眉が深く寄せられる。

「……その一言が、戦争を招くことになりかねぬのだぞ。」

玉座の間に重苦しい沈黙が落ちた。

愛する人を守りたい想いと、国を背負う皇子としての責務──二つの重圧がユリウスの肩にのしかかる。

やがて国王は低く告げる。

「この件、すぐに結論を出すわけにはいかぬ。隣国の使者が到着するまで、おまえも覚悟を固めよ。」

──運命の歯車は、確実に新たな試練へと動き出していた。
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