幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
議会の緊迫した空気に耐えきれず、私は大広間の扉を押し開けた。

「セシリア……!」

ざわめく視線を浴びながらも、私は震える足で歩を進め、大広間の端に立った。

その中央では、ユリウスと国王が真っ直ぐに向き合っていた。

「どうしても婚姻が必要なら……私は皇子の位を捨てます!」

ユリウスの声が堂々と響く。

「な、ならん!」

国王が立ち上がり、怒声が大広間に反響した。

「おまえは皇子として、その身を国に尽くすべきだ!」

けれどユリウスは一歩も退かず、拳を強く握りしめる。

「ですがっ……!それで愛する人を手放すことはできません!」

その言葉に場内がどよめいた。

私は胸が熱くなり、涙が溢れそうになる。

──国と愛。どちらを選ぶか迫られても、ユリウスは迷わず私を選んでくれたのだ。

国王の険しい瞳と、ユリウスの燃えるような瞳がぶつかり合う。

その瞬間、私の存在もまた、国の命運を左右する重さを帯びていた。
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