幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
議場のざわめきの中、ひとりの貴族が進み出て言った。

「隣国の姫を正妃に迎え、セシリア嬢を側妾とすればよろしいのでは。そうすれば両国も収まりましょう。」

その言葉に、胸が冷たく締めつけられる。

けれどユリウスは即座に首を横に振った。

「それでは誰も幸せにはなれません。」

きっぱりと言い放つ声音は揺るぎなく、議場を一瞬で静めた。

「私はイザベラ姫を傷つけたくない。政略のために心を踏みにじることは、決して愛ではない。」

そして私を真っ直ぐに見つめる。

「セシリアを愛人にするなど論外です。彼女は、俺の唯一の妃となるべき人だ。」

強い瞳に射抜かれ、胸が熱くなる。

「イザベラ姫には、他国との縁談を薦めます。彼女が真に幸せになれる道を探すべきです。」

その宣言に議場は再びざわめいた。

だが私は知っている。

──彼はあくまで私を選んでくれる。

愛されているという確信に、涙が滲むほど胸が満たされていった。
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