幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
「……あくまで政略結婚は受け入れないということですか。」

宰相の鋭い声が、大広間に響き渡った。

ユリウスは視線を逸らさず、静かに、しかし力強く言葉を返す。

「結婚とは、幸せになるために行うものです。国と国のために誰かの心を犠牲にするような結婚に、何の意味があるでしょうか。」

ざわ……と場内が揺れ、数名の貴族が声を上げる。

「殿下、それは理想論に過ぎませぬ!」

「国益を無視して愛を選ぶなど──」

しかしユリウスは一歩も引かず、声を張った。

「理想だからこそ守らねばならない! 幸せになれぬ婚姻は無意味です。それは本人にとっても、国にとっても不幸を招くだけだ!」

その言葉に、議場の空気が再びざわめく。

誰もが口々に囁き合いながらも、彼の瞳の強さに圧され、次第に声を失っていった。

私は胸を締めつけられる思いで見つめていた。

──ユリウスは本気だ。国を敵に回しても、私を選んでくれる。

涙が滲み、頬を伝い落ちた。
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