幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛
大広間の隅々にまで重苦しいざわめきが広がっていった。

「これでは戦争は免れまい……」

「いっそ今から戦の準備を整えた方が賢明ではないか。」

列席する貴族たちが、顔を寄せ合いながらひそひそと声を交わす。

誰も、ユリウスの言葉に賛同する者はいなかった。

「理想論だ……」「国を危機に晒すつもりか」

小声のはずの囁きが、鋭い刃のように胸に突き刺さる。

──こんな事になるなんて。

私は両手を強く握りしめ、震える唇を噛んだ。

ユリウスは国のためではなく、私のために立ち上がってくれた。

なのに、その信念がかえって彼を孤立させてしまっている。

広間の中央で毅然と立つ彼の背は、あまりにも孤独に見えた。

それでも揺らぐことのない瞳は、まっすぐに未来を見据えている。

「ユリウス……」

胸が締めつけられ、思わず名を呼びそうになった。

けれど今はただ、祈るように彼の背中を見守るしかなかった。
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