純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。


 
 会計を済ませ、バーのガラスドアを押して外に出た。

 夜風が頬に当たって、気持ちいい。
 アルコールのほのかな熱が体に残り、心地よい浮遊感がある。
 タクシーを呼ぼうと思ったけど、ヒールの足取りが軽い。駅まで歩こうかな。街灯がキラキラ光っている。

 でも、ほろ酔い状態になっていた私は急に足がふらつく。
 そういえば高いヒール、久しぶりだからだ。歩道の石につまずき、転びそうになる。その瞬間、地面が近づいてくる。心臓がドクンと鳴った。

 その時、誰かの腕に支えられる。温かい感触、強い力。体がふわりと持ち上げられ、地面に落ちずに済んだ。それに知ってる香りだ。

 夜の暗さで顔が見えない。だけど、街灯の光に映る。深い、優しげな目が見えた気がした。

 心臓がドクドクと鳴り、時間が止まったみたいだった。





 
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