純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
第6章 再会の衝撃


 

 地面に叩きつけられることなく、ふわりと体が持ち上げられる。カクテルのせいか、それともこの急な出来事のせいか、頭がぼんやりして、心臓がドクドクと鳴る。


「大丈夫?」


 低くて落ち着いた声が耳に響く。仮面越しに見上げると、夜の暗闇の中で男の人の輪郭しか見えない。
 背が高く、肩幅が広い。紺色のスーツの袖から覗く手は、力強く、しっかりしている。仮面の奥の目は、街灯の光にほのかに映り、どこか優しげだ。


「……あ、ありがとうございます」


 言葉を絞り出すが、声が震える。仮面パーティーで飲みすぎたせいか、足がふらつき、立っているのもやっとなのに今ごろ気づいた。プチパニックになっている私に男の人が私の腕を軽く支えたまま、静かに言う。


「こんな時間に、一人で歩くのは危ないよ。送るから」


 送る? 誰が誰を……いや、私か。でも、知らない人に? アルコールのせいか、頭が混乱する。断るべきだと分かっているのに、カクテルの甘い香りがまだ鼻に残り、思考が鈍い。抵抗する気力も湧いてこない。

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