純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
「でも、私……だ、大丈夫です。だから、離して……」
「花暖、俺だよ」
その声、その呼び方。心臓が跳ねる。男の人の顔が街灯の光に顔が照らされる。鋭い目、強面なのにどこか優しい表情。千暁さま…!?
「ち、千暁さま!? どうしてここに?」
頭がもっとパニックになる。なんでこんなバー街の夜道にいるの? 仮面パーティーに来ていたなんて、想像もしていなかった。
「それはこっちのセリフだよ。花暖、こんな夜遅い時間にフラフラ歩いてるなんて」
彼の声は低く、どこか怒っているように聞こえる。でも、その目には心配が滲んでいる。仮面パーティー、顔を隠せるから気楽に来たのに、こんな再会なんて……頭が整理しきれず、恥ずかしさがこみ上げた。
「私、ちょっと……飲みすぎちゃって」
顔を伏せると、モーブ色のドレスが夜風に揺れる。千暁さまが小さくため息をついた。