純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。


「ちょっと! その指輪、めっちゃ綺麗! プロポーズされたんだよね? ねえ、話して話して!」


 照れくさくて、つい指輪を隠すように手を握ってしまう。でも、心のどこかで、こうやって誰かに話したい気持ちもある。


「う、うん、ちょっと前にね…」

「ちょっと前って! めっちゃロマンチックだったんでしょ? どんな感じだったの?」


美奈さんのキラキラした目に負けて、つい口が滑る。


「先週、夜景の見えるレストランで…急に指輪を出されて。」

「きゃー! 最高じゃん! どんな人なの、彼って?」

「えっと、廉斗は…営業部のエースで、茶髪でスーツが似合って、いつも笑ってる人。優しくて、でも仕事にはめっちゃ真剣で…」


 話しながら、廉斗の笑顔が頭に浮かぶ。スーツの袖口から覗く白いシャツ、自信に満ちた立ち振る舞い、そして私を見る時の柔らかな目。
 でも、心のどこかで小さな声が囁く。こんな幸せが、私なんかに来ていいのかな? だって、私は、清澄家の愛人の子。旧華族の名門、清澄家に生まれたけれど、母は響也さまの愛人だった。

 清澄家では優しく育てられたけれど、外の世界ではいつも愛人の子と囁かれてきた。母が亡くなってからは、そのレッテルがさらに重くのしかかる。そんな私が、こんなキラキラした指輪をしていていいのかな。指輪の輝きを見るたびに、喜びと不安が胸の中でせめぎ合っていた。
 


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