純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。



 
 いつもの昼休み。会社の近くのコンビニで買ったハムとチーズのサンドイッチを手に、公園のベンチに座る。秋の風が頬を撫で、木々の葉がカサカサと音を立てる。スマホを取り出し、廉斗からのLINEを開く。

「花暖、今日のディナー楽しみにしててな。十九時にいつもの駅前で」


 メッセージを読んだ瞬間、胸がキュッと締め付けられるような、甘い疼きを感じる。返信しようと指を動かすと、隣のベンチから同僚たちの声が聞こえてくる。


「あの佐山さん、最近ちょっと調子乗ってるよね。指輪見せびらかしてさ。」

「まあ、嵯峨さんと付き合ってるんだから、仕方ないんじゃない? でも、ほら、彼女って……清澄家の愛人の子なんでしょ?」


 サンドイッチが喉を通らなくなる。胸がズキンと痛み、手が震えた。急いでベンチを立ち、足早に会社に戻る。知ってた。

 こういう目、こういう囁き、ずっと見てきた。子供の頃から、どこに行ってもついてくる影のようなもの。でも、廉斗はそんなの関係ないって言ってくれた。

「花暖は花暖だよ」

そう言って笑ってくれた。その言葉を思い出すと、少しだけ心が軽くなるのを感じた。


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