純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
遡ること数日前の夕方、仕事を終えて駅前の噴水広場で廉斗を待つ。噴水の水がキラキラと夕陽を反射し、街の喧騒が心地よいリズムを刻むのを聴いていると紺色のスーツに茶髪が映える彼が、遠くから笑顔で手を振ってくる。スーツのジャケットが風に揺れ、ネクタイが少し緩んでいるのが彼らしい。
「花暖、お疲れ! 待った?」
「ううん、今来たところ」
彼の手が私の手を握る。大きくて温かいその感触に、ドキッとする。昼間の同僚たちの言葉が頭をよぎるけど、廉斗の手の温もりがそれを溶かしてくれるみたいだ。
「じゃ、行こうか。今日の店、めっちゃいいとこ予約したんだから」
連れて行かれたのは、ビルの高層階にあるレストラン。エレベーターに乗り、ドアが開くと目の前には東京の夜景が広がる。無数の光が宝石の海のように輝き、まるで別世界に迷い込んだみたいだった。