明治誓いの嫁入り──政略結婚から始まる危険なほど甘い溺愛
そして私たちは一緒に浴室を出ると、そのまま寝室に入った。

私は誠吾さんの前に正座し、母に教えられた言葉を口にする。

「ふつつかな嫁ですが、何卒よろしくお願い致します。」

すると誠吾さんは、不意に「ふはは」と笑った。

私は思わず顔を上げる。

「……可笑しかったですか。」

「いや。本当にそう言うんだなと思って。」

母からの教えを守ったつもりだったのに、どこか拍子抜けしてしまう。

けれど、その笑みは冷ややかさとは違う、柔らかいものだった。

「澄佳。」

名を呼ぶ声に振り向くと、誠吾さんが大きな腕を広げていた。

逞しい体が影を落とし、私を包み込むように近づいてくる。

胸の鼓動が止まらない。

でも、不思議と恐怖はなかった。

ただ──これから私は、本当にこの人の妻になるのだと実感していた。
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