明治誓いの嫁入り──政略結婚から始まる危険なほど甘い溺愛
そして嫁入り当日。

私は白無垢に身を包み、馬車に揺られて矢崎家へと向かった。

「まあ、花嫁さんよ。」

「綺麗ねえ……」

道沿いに集まった人々の視線が、皆、私の衣裳に注がれている。

笑顔で手を合わせてくれる町の女たちの姿に、ほんの少し救われる思いがした。

せめて見知らぬ人々の目に、美しい花嫁として映っているのなら、それだけでも十分だった。

矢崎家に着いたのは三十分後のこと。

意外と近いのだと、そのとき初めて気づいた。

「花嫁さんの到着だ!」

門前に集まった人々の間から歓声が上がる。

「ええ?こんな綺麗な方が坊ちゃんの花嫁?」

「さすが華族のご令嬢、品が違うな。」

祝福と羨望の入り混じる視線に晒されながら、私は馬車から降りた。

その先に──無表情で佇む矢崎誠吾の姿があった。
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