キミノオト

夕食を食べ終えた私は、歌番組を見ながら海音にネイルをしてもらっていた。

最近人気の若手バンドが画面に映し出され、演奏が始まる。

ドラマの主題歌になっている曲だ。

すると、私の手元に視線を落としたまま、音楽に合わせて海音が口ずさみはじめた。

珍しい。

どんなに流行っていても、気に入った曲やアーティストでなければ聴かない海音。

それが、この曲は口ずさめるほど何度も聴いているってことだ。

きっと今話しかけたらこのかわいらしい歌声は止まってしまうだろう。

私は海音の心地よい歌声に耳を傾けた。


曲が終わったところで、帰り道に考えた作戦を決行することに。

「ところで、明日は何曜日でしょうか?」

「土曜日だよ」

「てことは、仕事お休みだね」

「そうだね?」

私の質問に困惑した顔をする海音。

そんな顔もかわいい…じゃなくて

「じゃーん!チケットとっちゃいました!明日!」

私は得意げにスマホに表示されたwebチケットを見せた。

それは有名なテーマパークのもので、海音の大好きな場所だ。

地元にいたころは今日明日で気軽に行けるものではなかったけど、せっかく電車1本で行ける距離に引っ越してきたんだし、少しでも気が晴れるといいなって思って。

「え、明日?」

驚いている海音。

「そう!朝から晩まで楽しもう!」

「うん!行きたい!ありがとう」

海音は嬉しそうに笑って、何がしたいか、早速考えているようだった。

少しでも気が紛れてくれたらいいな。

その後、完成したネイルはプロ顔負けの仕上がりで大満足。

私たちは他愛もない話をした後、同じベッドで眠りについた。
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